徒然草

紫野は人間味のあるアーティストになりたい

舟出

おはこんばんにちは。

紫野です。

 

今日は、オリジナル曲の「舟出」について、ライナーノーツ的につらつら書いていきたいと思います。

 

原曲はこちら

https://www.instagram.com/reel/CjLRjDWg9Au/?igshid=YmMyMTA2M2Y=

 

私は前向きな曲とか、明るい曲とか、

そういうものをこれまで作ってきたことがありませんでした。

自分には書けないと決めつけていた節もあります。

なんだか、

元々の性分がドン引きされるくらいネガティブなので、希望とか夢とか、そんなものは「所詮」、と思い留まってしまうことが多いみたいで。

夢をね、追いかければ追いかけるほど、

自分のことが分からなくなっていくような、

そんな感覚がしていたんです。

 

大好きなフジタ カコちゃんの曲ばかり聞いているからか、「海」というテーマで音楽のことを考えるようになって、

彼女の曲にある【群青】のように、

「夢という海は深く、あまりに広すぎる。」

と絶望していたんだと思います。

まだ駆け出して2年にもならないくせに絶望なんてお門違いだったと今になると笑い飛ばせる話でもあるのですが…

 

 

 

そんなときに、舟出を作るきっかけになった舞台【世界が朝を知ろうとも】のオファーを頂きました。

 

その世界で唯一訳が分からない設定は、

「人間が存在意義を失うとムシになってしまう。

虫になれば最後、二度と人間には戻れない」

「全てのムシは人間だった可能性があるから、採取も駆除も【殺人罪】【誘拐罪】として重刑に処せられる」

というものです。

簡潔に作品のあらすじを書くと、いや、これがまた全然簡単に書けないんだな。

ある女性がただただ運がないって話なんですが、

旦那さんが蒸発してしまったんですね。

子供が欲しかった彼女が妊娠したと同時に、

夫が音楽プロデューサーを語った詐欺師に引っかかって蒸発して、

絶望の中でも頑張って産んだ子供がカマキリだった。

 

っていう話です。

彼女は、それでも自分のお腹を痛めた子供だからと【淳也】と名付けて本当に甲斐甲斐しくお世話していました。

でも、やっぱりムシだから、

ストレスが重なってしまって、

ある時こう思うのです。

「カマキリなんかのために、人間の私が何やってるんだろう」って。

そして淳也を踏み潰してしまうんです。

女性がね、

カマキリを踏み潰しながら狂っていくんです。

その様子を観客の皆さんは見せられながら、

なぞに前向きな舟出を聞かされるというそれはもうカオスな劇中歌なんです。

 

脚本家の方と沢山お話をして、

私も沢山台本を読み込み、線を引いて、

なんだか国語の授業みたいだなーなんて思いながら、考え抜いた歌詞が今の歌詞です。

脚本家の方曰く、絶望的なシーンに明るい歌を歌うことで気持ち悪さを増したいとかってことだった気がします。

上手いなぁと思いながら制作に取り掛かりました。

 

ただ、途中からは、作品がというより、

私や私の周りの人のために、

その人たちが新しいどこかへ行きたい時、

背中を押せるものになって欲しいと思うようになりました。

 

夢、とか、そういうものだけじゃなくて

「生きる」という行為には常に【選択】が求められます。

場合によっては、行きたくなくても遠くに行かなければならない時が来る。

言いたくなくても別れを告げなければならない時が来る。

 

そんな時、心の中にあるものが【希望】だとしても、【不安】だとしても、

私たちは歩いていかなければならないから、

小さな小舟を漕ぎ出さなければならないから、

せめて空に星が輝いていて欲しいと、

そういう願いを込めて作りました。

 

太陽でもいいし、月でもいいし、

その他星でもいいんです。

何か一つ、

自分が信じられるものをぼんやりとでも見つけられたら、怖くても進めるような気がして。

 

私は臆病なくせに強がりだから、

リュックの中には希望とか夢とか、

そういうものを詰めると公言するのかもしれないけれど、

本当はきっとその何倍も大きくて重い不安とか、恐怖とか、そういう気持ちが入っているんだろう。

だから少しでも気持ちを軽くしたくて、

ジャムパンを一緒に入れるんです。

美味しいものを食べたら少しは落ち着くでしょ?

 

 

舟を漕ぎ出したらもう元の場所には戻らない覚悟を持って、

私は東京に来ました。

真っ直ぐ進路を取れているかどうか、

自信はありません。

自分が思っているより、

たくさん寄り道をしたり立ち止まったり蹲ったり、

そして逆走もしているはずです。

 

でもやっぱり空を見たら光ってるものがあって、

それが今、私の救いになっているんだと思います。

迷わないでいられるのだと、

迷っても戻ってこられるのだと思っています。

 

 

皆さんは、

今いる安息の地から離れなければならない時、

旅に出なければならない時、

何をカバンに詰めますか?

 

 

また次回。

 

紫野